・放射線の影響は「細胞・遺伝子単位」で解明されているのにも関わらず、未だに60年前の「臓器単位」の係数を用いて被害を「予測」している。
このデータは、他ならぬ広島と長崎に投下された原子力爆弾の生存者データである。
吸収されたエネルギーが変換され、細胞の膜や器官が破壊されて、遺伝子の破損やエラーに繋がることは第二部で取り上げた。
シーベルトは過去の統計に偏っていて、最新の科学が反映されてないことが指摘されている。原子力産業が「シーベルト」を用いて低線量の被曝を「許容」している実情があるからである。
|
・代表例として、1960年代にジョン・ゴフマン博士が「低線量」どころか一つの原子から出た一筋の放射線(トラックと呼ぶ)が細胞に及ぼす影響を提唱し、大問題になった。米政府の要請で発表したデータだったが、
「内部被曝は少しでも、がんのリスクを増やす」と発表してしまったからだ。ゴフマン博士はX線と乳がんも関連づけたため、医療現場にも大きな波紋があった。ここから「LNT説=直線しきい値なし」が取り上げられ、NAS
(米国科学アカデミー)によるBEIRレポートでも裏付けられたが、リスクを容認する側からは否定的な意見も多い。
|
・「直線しきい値なし」の影響は立証されていない、と言う批判があるが、「しきい値あり」の説の方こそ、立証できない。影響のある/なしはこれまでの被曝データに基づくもので、病気を特定のがんに限定するなど、偏見が入っている部分が多い。この何十年も続いている傾向は、「卓上で希釈される放射能」に記した。 |
・シーベルトを内部被曝に正確に適用しようとしても、全身の吸収線量を計算するためには各部位の線量を計らなければいけないが、測定方法や測定器の制限により、外部被曝と内部被曝の区別が殆どついてない場合が多い。内部被曝の長期的な影響が出る可能性を無視していることになる。 |
・まとめると、シーベルトは放射線の総線量を知る上では有効だが、人体への影響は個人差も含め無害だと保証できない部分がある。
被曝は免疫の負担になることは分かっているのだから、少ない線量でも体の免疫が抑えることができるか、と言う個人の課題になってくる。
その程度の目安を誰もが知りたいだろうが、どの程度のリスクを受け入れるかと言う、リスク管理の意識(リスクに関する記事はこちら)にもよるので、水掛け論になってしまう可能性も強い。
リスクを人に伝える際には、確定的影響と確率的影響、その誤差、個人差を含めて話を進めなければいけない。
平均値ばかりとっても、健康な大人の男性が持ち上げられる重量を女性や子供にまで適用できないのと一緒で、個人差を認めなければ「個人」という概念を消し去っているも同然なのです。
|