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2012年の5月5日には、日本の原発全54基が停止状態になりました。
事故の影響、そして定期検査が重なったとは言え、これまで絶えず原発が稼働していた国にとっては、快挙だと言って良いでしょう。
再処理に必死になっていた数年前の状況に比べたら、再稼働のために首相が県と国民を説得するために奔走する事態すら、考えられないことです。
さて、子供の日から約一ヶ月が経過して、私たちはその間、何について考えていたでしょうか。
原発に頼っていない社会に住んで、何を思ったでしょう。電気などは、どこで発電されていようが体で感じないし、
生活に影響がある訳でもありません。
ただし、この前代未聞の状況において、この一ヶ月どう考えて過ごしたかによって、日本の未来が大きく動くような重要な時期だと思うのです。
これまで50年近く原発が稼働している国に産まれて、暮らして来たのですから、例えあと数年動いても、
相対的には何も変わらないと思ってしまうかもしれません。
しかしながら、再稼働を巡る議論において惨事の教訓だけではなく、「通常の運転においてどのような影響があるか」
と言う視点からも、原子力を選択する上で考慮すべき「原点」に立ち返ることが正しいと思うのです。
それは例えば、通常運転における発電がいかに空気や水の汚染、高レベル核廃棄物の生産、作業員の被ばく問題などに繋がっているかを
思い出すべきなのです。
個人的に印象に残っているのが、去年の5月8日に敦賀原発2号機から放射能ガスが漏れた事件があった時のことです。
翌日のニュースでは、「8日午後3時からの7時間で計41億ベクレルの放射性ガスが外部に放出された。ただ、同社が年間の
上限値とする量の40万分の1で、環境への影響はないとしている。」 (朝日)
と書かれていました。
この報道が正しいとして、年間上限の40万分の一が漏れたのだったら、一年は一日の365倍なのに何故ニュースになるのでしょうか。
41億ベクレルx40万倍と言うことは、年間に1.6京ベクレル (16,400,000,000,000,000 Bq)まで許されていると言うことになります。
まず、本レポート第二章のグラフ(ウラン235の主な核分裂生成物)を見れば、「放射性ガス」とは化学的にフィルタしにくい希ガスのことで、
キセノンやクリプトンであることが分かります。
大気に放出されたクリプトンは崩壊を経て放射性のストロンチウム89に、キセノンはセシウムに、それぞれ生まれ変わります。
つまり、希ガスとして放出されても、放射性であるために金属に変わって環境に残ってしまうのです。
(キセノンが崩壊するセシウムは安定していますが、体に悪影響を及ぼす重金属であることには変わりません)
このような流れを見れば、これまで米国でも原子力発電所付近の乳牛からストロンチウムが発見されたことも理解できますし、
ストロンチウムは骨に蓄積しますから、市場に出回ってしまっていることには厳重に注意すべきなのです。
また、原子炉や使用済燃料プールを絶えず冷やさないければいけない発電所は、常に排水を出します。冷却のために大量の海水を使っている訳ですが、
高温になった排水が従来の生態系に影響を与えるだけではありません。
炉心溶融(メルトダウン)でもない限りセシウムなどの有害物質は含まれませんが、それでも冷却水にはトリチウム(放射性の水素)などが含まれます。
たまにトリチウム漏れによる事故が報道されたりもしていますが、水素がベータ崩壊する際にも、放たれた電子により内部被曝を起こす原理は他の元素と同じです。
最後に、原子炉と人口密度のグラフでも表した通り、日本列島の人口に対して、原子炉の密度が世界でも群を抜いている上、
更に活断層の存在や地震の多さを考えたら、本当に不適切な立地条件であることが明白なのです。
このような事から、電気の量が足りるか、足りないか、あるいは他の燃料を使った際の経済的負担だけではなく、
「原子力発電を続けることによって、どのような環境的負荷を起こし、直接・間接的に人体にどのような影響を及ぼす可能性があるのか」
と具体的に検討すべきなのです。
関東圏のセシウム汚染が囁かれる中、健康への害だけでなく、どのようにして免疫を強く保つか、個人の心持ちも大切になります。
幸い日本には「塵も積もれば山となる」と言う諺がありますし、環境や体の汚染に対して「少しなら良いだろう」と認めるのは卒業した方が良いでしょう。
もちろん、この地球温暖化や気候変動が深刻化している最中、火力や水力、再生可能エネルギーにも負荷や欠点、限度は必ずあります。
それぞれの良い点、悪い点、克服できる所、できない所が出揃って、初めてまともな話し合いが可能になります。
私たちに必要なのは、どのカードを選ぶかだけでなく、どのカードをキープし、どの順番で切っていくのか、作戦を練る時が来ているのです。
代替案も、既に沢山出ている中、実用化できるかどうかは民意に委ねられている部分も大きいのです。その結果、今の政策がある訳ですし、
今年の夏をどう乗り切るかだけでなく、10年、20年先の夏も考えてみようではありませんか。
空気や水は、燃料以上に貴重な永遠の資源です。
不安材料の少ない電気で冷房を浴びた方が、体感温度は変わらなくても、きっと気持ち良いと思いますよ。
peace
s02
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