「僕と核」2012

    第二部:被ばくの仕組み

 

< DNAへの影響 >

放射性物質が引き起こす電離は、細胞や遺伝子 (DNA) のレベルでは、どのような影響があるのでしょうか。

 

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放射線の高エネルギーが失速するにつれて、局部的に細胞(膜や器官)を破壊するか、遺伝子の配列を変えてしまいます。
(当然のことながら、α、β、γ線は、すべて違う特徴で電離のクラスタ=集まりをつくる)

放射線生物学においては、化学反応による間接作用が注目されます。
体の8割近くは水で出来ているため、水が放射線分解されると、さまざまな活性酸素やフリーラジカルが産まれます(定義は下の項)。
これらは化学反応し易いため、ほんの一瞬しか存在しませんが、周りに大きな影響を与えます。

放射線治療はこの方法で使ってがん細胞を破壊します。 しかし、活性酸素が量産されたり制御不能な状態に陥ると、不用意に遺伝子が破壊されてしまう。
細胞や遺伝子の破壊には何重もの防御構造があることは述べたが、長い遺伝子のどの部分が破壊されたかにもよるし、細胞が生き残って遺伝子のエラーが複製されてしまったり、防御機能さえ破壊されてしまった場合、問題は消えずに残ります。

 


[活性酸素 (かっせいさんそ) &フリーラジカル]

活性酸素 (Reactive Oxygen Species) は、酸素分子を含む反応性の高い化合物の総称です。
通常、活性酸素はミトコンドリアが酸素を分解したり、白血球、酵素の生成において場面で働きがある。
フリー・ラジカル (free radical)とは、 独立して存在できる状態(フリー)のラジカル(一つ以上の、ペアではない電子=殻で孤立している電子を持つ分子)のこと。

 
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活性酸素は、ラジカルとそうでないものも含みます。ヒドロキシルが二つ合わさると過酸化水素になるように、水を構成する酸素と水素でさえ、バランスが崩れると生物にとっては有害物質に変身するのです。

 

細胞には水が多分に含まれているため、放射線によって分解されると、細胞や遺伝子を破壊する分子が産まれる。
これらの分子は、活性酸素やフリーラジカルと呼ばれて、遺伝子の異変が修復されないまま増え続けると、がんに繋がる可能性がある。

 
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