砂乃性

人は人を通じてのみ人に成り得る
だから一人では生きて行けぬ。
人の瞳に宿る性、是満たさずして頭は霧の中
母のお腹の中から墓に眠るまでの旅路の道程の果無さよ。
誰もが探す性、流石に変わる時の細波に触れる血潮
一粒の砂に木目細かく決められた形、 秘められた命
遡れば全て同じ巌から彫り刻まれた摩可不可思議よ!
悪しきも良しも織り混ざる世の中歩けば魔がさす者もありき
誰の胸も変わらず是然り、息吹ある限り久遠の響き

人は人を通じて心を解り得る
だから一人では全て学べぬ。
人の言葉に宿る性、是聴かずして首は砂の中
生身の体から放たれる裸の音霊 愛(まな)を語る眼差し
誰もが求む安らぎの割に先に品定めする人の値打ちよ!
一夜にして築き上げる砂の城は一夜にして崩れ落ちる。
逆(さか)を言えば日夜に漬け手塩にかければ何事も成せば成る。
花の色は悪戯に移り人のイロハ巧みに捕らえる比喩
八千代に散りぬるを狂おしいまでに咲き誇り土埃に消ゆ

祇園精舎の鐘の音、諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理を表す
奢れる者、久しからず 唯春の夜の夢の如し。
猛き者も終には滅びぬ 偏に風の前の塵に同じ。